そうですね(笑)だいたい建築現場と言うものはセメントなどでかなり汚れてしまいます。
しかし、私たちは毎日の汚れはその日に落とし、当然周辺道路も綺麗にします。
そもそも、基本的に汚さない様に仕事をする事を心掛けています。
現場経験が長くなると、現場の状況を見ればどの様な現場かがわかります。まず汚い現場は駄目です。
やる気も起らず仕事も雑になりがちです。だから仕事に取り掛かる前に現場の掃除から始めます。
一般的に左官という仕事は、見た目や道具、乗って来る車にしてもドロドロで汚いイメージがあるのですが、昔から私はそれが嫌いでイメージを変えたいとの思いで取り組んできました。
「山本さんのところの仕事は一味ちがうぞ!」と、普段の取り組みからもにじみ出る様な仕事がしたいので、若手への指導は現場の掃除や片付け、そして挨拶などを優先して教え徹底させています。
技術云々はそれからです。
例えば角に丸みを付ける場合はフリーハンドです。
普通は定規を使うのですが、 私たちは一切使わず手の感覚で行います。疑われる方もいるのですが、それが当たり前になる様に指導しています。
仕上げを塗る際も下地 がしっかり乾くまで時間を置いてからが基本です。
納期などの関係ですぐにモルタルやコンクリートを塗って仕上げてしまう業者さんもいる様ですが、急いで造ると後々壁が割れてしまいます。
下地との収縮率が違うので、期間をおかずに仕上げると割れやすくなるのです。
それは当然のことです。
もし妥協して何か起こった場合、結局お客様に迷惑をかけてしまいます。
当然お客様には建築に詳しくない方も居られるので、しっかり説明した上で仕上げる事が良い家の完成に繋がります。壁の色に関しても、顔料を使わなければ再現出来ない色を指定された場合は断る時もあります。
顔料を使用した壁は、雨に晒されると徐々に色が抜けてしまいます。
ですので、例えば瓦から赤色を抽出する場合や、土の色を最大限に利用して自然の風合いを出す様にしています。
モルタルは配合比率というものがあり、一般的には それを基本に造ります。
しかし、私の子供がアトピーになった事がきっかけで、お客様にも色々な人が居るはずと考える様になりました。
例えばお客様によってはクロスなどを使うよりも土や漆喰を使った家の方が良い場合もあり、材料もそれに合わせてオリジナルで作りたいと考える様になりました。
今でも材料は自分で現地に足を運んで調達しています。
良い物は自分の目で確かめたいのです。
材料だけではなく他の職人さんに対しても同じです。
父親より8年間指導を受けた後は色々と各地に遠征に出向き勉強してきました。
やっぱり自分自身で見て感じたいのです。
その事は自分からあまり話さないのによくご存じですね(笑)
左官のグランプリや評議会が年に一度あり、そこで優勝した事があります。
優勝した事はあくまで自分の目安であって、その事をひけらかして営業した事はありません。
常に納得いくものを造る様に取り組んでいますが、実際の仕事は一人でできるものではないので現実との狭間で苦労する事もあります。
そう言う中でも妥協せず、お客様に仕上げた仕事を気に入って頂いたり、評価してくれる仲間を大切に心掛けています。
取材・文:アコーダー㈱ 西川雄太